SDGsの市場規模は?経済効果予測や現状について解説

SDGs(持続可能な開発目標)は世界中で取り組んでいることもあり、巨額の市場規模が予測されてきました。しかし、調査機関によってデータに違いがあるため、何を参考にすればよいかわかりづらいといえます。

そこでこの記事では、SDGsの市場規模予測データを複数取り上げながら、期待される経済効果、SDGsの市場規模は?経済効果予測や現状について詳しく解説します。

SDGs世界の市場規模予測

SDDGsの市場規模は、いくつかの機関や団体などが予測しています。それらのデータは、SDGs17目標が達成されたと仮定し、算出されています

ここでは、国連開発計画(UNDP)、デロイトトーマツ、年次総会(ダボス会議)、経団連・東京大学・GPIF共同研究が発表したデータを見ていきましょう。

国連開発計画(UNDP)が予測データを発表したのは、2017年です。

やや古いデータですが、その際に発表された市場規模予測は年間12兆ドル(約1,300兆円)でした。

続いて、デトロイトトーマツ。同社は、世界的に有名なコンサルティングフォームです。市場規模予測のデータを発表したのは、2017年12月でした。

それによると、SDGsの各目標によって市場規模は異なり、最小で目標4の71兆円、最大で目標7の803兆円としています。 その他のSDGs目標に関する市場規模予測は、以下のグラフのとおりです。

出典:デロイトトーマツ「SDGsビジネスの市場規模」

年次総会(ダボス会議)に関しても、国連開発計画(UNDP)やデトロイトトーマツと同様、2017年に市場規模予測を発表しています。

あくまでも試算結果ですが、市場規模を約2,160兆円と予測しました。

最後の経団連・東京大学・GPIF共同研究は、2020年3月に発表されたデータとなります。

それによると、SDGs関連の新市場が創出されて目標を達成した場合、約760兆円の市場規模になると予測しました。

機関や団体などによって予測数値が異なるため、実際にどのくらいの市場規模になるのかわかりづらいといえます。

とはいえ、SDGs17目標を達成することで、世界的に多額の市場が生まれることは間違いなさそうです。

SDGsの経済効果は、どのくらい?

SDGsの市場規模予測がだいたいわかったところで、経済効果についても見ておきましょう。以下の表を見てください。

こちらは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部が、2020年に総務省の資料を参考とし、作成したものです。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「SDGsの経済効果~どこまで成長につながるか」

業種によって経済効果は異なりますが、2015年から2030年までの間に目立った成長が見込まれるのは、デジタル化関連(金属工作機械、医療用機械器具、道路貨物輸送)、グリーン関連(事業用電力、電子部品)でした。

トップは、ソフトウェア、情報処理・提供サービスの53.7兆円です。次いで、ネット関連サービス34.6兆円、金融28.1兆円と続きます。

ここからわかるのは、SDGs成功の恩恵が及びやすい業種と、そうではない業種に分かれることです。

万が一、SDGs成功の恩恵が及びづらい業種に携わっている場合、早めに何らかの手を打っておいたほうがよいかもしれません。大きなビジネスチャンスを、逃す可能性があります。

新市場創出や経済効果は本当に見込めるのか?

ここまで、市場規模や経済効果の予測について解説しました。実際に、これらは実現可能なのかということですが、2022年時点、雲行きは怪しいといえるでしょう。

理由は2つあります。1つは、SDGs目標達成の進捗が思わしくないことです。

国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が2022年に発表したレポートによると、2015年から2019年まで、SDGsの目標達成指は毎年0.5ポイントのペースで伸びていました。

同レポートでは、この段階で2030年までに17目標を達成することは困難だったと指摘しています。

また、2021年から2022年にかけて、2年連続でSDGsの進捗は滞っているそうです。いちばんの原因は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にあります。

この状態が長く続けば、2030年までに目標を達成することはできず、SDGsによる新市場創出や経済効果はあまり期待できません。

もう1つの理由は、新市場を創出するために、多額の資金が必要なことです。

経団連が発表したデータによると、2030年までのあいだ、追加で844兆円もの資金を投資する必要があるといいます。とはいえ、その資金をどうやって確保するか、世界中で頭を抱えているのです。

政府が予算を確保するほか、税制措置の創設、民間資金をSDGsに関連する投資にまわすなど、いくつか方法はあります。ただし、すべての国や地域で取り組めるわけではありません。

パンデミックの影響で経済が落ち込んでいたり、途上国は先進国などから資金援助を受けていたりして、そもそもSDGsに回す資金がないからです。

SDGsによる新市場創出や経済効果は、未来に希望が持てる話ではあります。しかし、その前段階でつまずいているのが現状なのです。

【まとめ】SDGs市場規模は、取り組み次第で大きく変わる

SDGsに取り組めば、自然に市場規模が拡大していくわけではありません。多額の資金を投資し続ける必要があります。

予測されているSDGsの市場規模は巨額ですが、それを実現するには、国や企業、個人が力を合わせなければならないでしょう。今回お伝えした情報を参考に、今できることを模索してみてはいかがでしょうか。