SDGs目標2「飢餓をゼロに」の概要と原因を解説
SDGs目標2である「飢餓をゼロに」。私たち日本人には馴染みのない課題と感じる人が多いかもしれません。しかし、コロナ禍やロシア対ウクライナの戦争などの影響から、特に食料自給率が低い国や地域はピンチを迎えており、飢餓問題が身近なものとなってきています。
持続可能な社会づくりのためには、食料や飢餓について、世界や日本の現状を知ることがとても重要です。そこでこの記事では、SDGs目標2の概要に触れながら、日本の状況や課題について解説していきます。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」の概要と原因
「飢餓をゼロに」の概要
SDGs目標2は、すべての人たちが、栄養のある十分な食事を摂り、地球の環境を守りながら持続可能な農業を進めることを目標にしています。
飢餓とは、食べ物を十分に摂ることができず、栄養が不足して健康が維持できない状態のことです。世界では約8億人(9人に1人)が飢餓に苦しんでいるといわれています。
そういった人たちに支援の手を差し伸べるとともに、持続可能な社会づくりのために、環境を守りつつ食料の生産性を上げていくことも目標2の特徴です。
「飢餓」の原因
飢餓は、なぜ起こるのでしょうか。原因としては、「自然災害」「紛争」「食料供給バランスの偏り」が挙げられます。中でも、自然災害の発生しやすい地域に住む人たちは、飢餓になる割合が高い傾向にあります。
洪水や干ばつなどで農作物が収穫できず、家や仕事がなくなり食料を手に入れることが難しい状況になるからです。紛争による避難で、家や農地を捨てざるを得ない状況になることも飢餓につながっています。
また、世界的には十分な食料があったとしても、行き渡らないバランスの偏りも原因の1つです。
目標2のターゲット8つ
目標2は、具体的な目標を8項目のターゲットに分けています。詳細は、以下の表のとおりです。
出典:SDGsジャーナル
2030年までに世界中の飢餓をなくし、誰もが一年中安全で栄養のある食事を十分に摂られる状態にすること。特に5歳未満の子どもやお年寄りが、十分に食事が得られる取り組みの実施を掲げています。
また、農業などの食糧生産者の生産性を上げ、生産量を増やし、環境を壊さずに持続できる仕組みを作ることも重要な目標です。そのために、遺伝子技術や開発について、国際的な協力(公正な分配)を推進するとしています。
目標2における日本の現状と課題
出典:SDGs media
上記の表は、SDGsの各目標における日本の進捗度です。色分けの意味に関しては、以下のとおりです。
- 緑:目標達成
- 黄色:課題あり
- オレンジ:重要な課題あり
- 赤:主要な課題あり
また、矢印は進捗の動向や変化を4パターンで表しています。横棒が記載されている箇所は、データなしという意味です。
これによると、2022年の日本の状況は、重要な課題があるとされているものの、改善傾向にあるといえそうです。
では具体的に、どのような課題があるのでしょうか。ここでは3つに絞って見ていきましょう。
「相対的貧困」による「飢餓」
SDGs目標1「貧困をなくそう」とも関連しますが、日本は「ある国において国内の平均的な文化や生活の水準と比較して、困窮した状態」を示す「相対的貧困」の比率が約15%もあります。これは国際的に高い数値です。
さらに「飢餓を経験した人」は全体の約5%(20人に1人)という調査結果もあります。日本は食料の廃棄(フードロス)が社会問題になっている一方で、十分に食料を買えない人たちが少なからず存在するのです。
十分な栄養のある食事が摂れないという意味では、これも飢餓状態です。このような経済格差が生む飢餓が、日本の課題の1つになっています。
年間522万トンの食品ロス
日本の食品ロス(フードロス)量は、年間約522万トン(2020年、環境省発表)と推計されています。世界の食糧援助量は320万トンといわれていますから、相当量を無駄にしている状況です。
日本は衛生意識や規制がしっかりしており、消費期限や賞味期限が近づいたものは販売しない店舗も多く、これも食品廃棄の原因の1つになっています。
無駄になった食品を分配する民間団体やNPOの活動もありますが、さらに取り組みを広げていく必要がありそうです。
世界情勢の影響を受けやすい食料自給率の低さ
日本のカロリーベースでの食料自給率は約38%で、世界的に低い数字となっています。他国間で紛争が起こり、貿易に影響が出ると、食料の多くを輸入に頼っている日本は食料難に陥ってしまうのです。
そのため、食料自給率を上げることも、日本にとって重要な課題となっています。
【まとめ】日本も問題山積み!目標2は他人事ではない
日本には、「相対的貧困」で飢餓状態にある人が少なからず存在します。そういった人たちに手を差し伸べながら、一方で食糧自給率の低さや食品廃棄の問題をクリアしていかなければなりません。
利便性やコスト効率ばかりを求めるのではなく、持続可能な社会に変革していくことが重要です。そのための取り組みが、今求められているといえます。